学校より

「ジャネーの法則」(平成23年度修了式校長訓辞)

 今日は、1年の区切りですので、それにちなんだ「ジャネーの法則」という話をします。時間の流れるスピードについての話です。何となくこわい話になるかもしれません。

 まずは、この1年間を振り返ってほしいのですが、どうですか皆さん、長い1年だったでしょうか、あっという間の1年だったでしょうか。
 たぶん、あっという間だったと感じている人が多いのではないかと思います。
 もっと言えば、こんなふうに思っているのではありませんか。
「小学校の時は1年のたつのがずいぶん長かったのに、中学、高校と進むにつれて、だんだん1年が短くなってきたなあ」。

 実はこの「歳をとるにつれて、時間の経つのがだんだん早く感じられるようになる」というのは、誰もが口をそろえていう、まぎれもない事実です。
そして、このことを心理学の切り口からきちんと説明したのが、フランスの学者ポール・ジャネーが発表した「ジャネーの法則」です。
 これがなかなか面白いんです。

 簡単に言うと、こうです。
 例えば5歳の子どもにとって、「1年」という時間の長さは、5歳のうちの「1年」ですから、人生の5分の1に当たります。つまり、「1年」は人生の20%を占める時間なんです。
 皆さんはどうでしょう。高校1年生はほとんどの人が16歳ですので、「1年」は人生の16分の1にあたります。パーセントに直すと、ほぼ6%に過ぎません。
 つまり、「1年」という時間は、5歳の子どもにとっては人生の20%にあたり、皆さんにとっては、人生の6%に過ぎない。
 このため、5歳の子どもと比べると、皆さんの方が3倍近く「1年」のたつのが早く感じられるんです。
 高校2年になると、「1年」という時間は人生の17分の1になります。3年になると18分の1になります。そうやってだんだんだんだん「1年」の経つのが早く早くなっていく。これが「ジャネーの法則」です。
 私は今、およそ50歳ですので、私にとっての「1年」は人生の50分の1に過ぎません。たった2%です。従って、「1年」が皆さんよりもさらに3倍早く感じられてしまいます。皆さんの「4ヶ月」と私の「1年」とが、感覚的には等しいことになります。

 こわい話はここからです。
 このジャネーの法則をつきつめていくと、ちょっと不気味なことがわかってきます。
 「人生の中間地点」、マラソンで言う「折り返し点」は、いったい何歳ごろかということです。
 今の平均寿命は80歳くらいですから、人生80年として、普通に考えると40歳くらいが折り返し点ですよね。
 しかしジャネーの法則をあてはめると違う。時間のたつのが年々早くなっていくからです。頭の中で感じる人生の折り返し点は、40歳よりもっと早くなります。
 さて、折り返し点はいったい何歳でしょう?

 答を言う前に一つだけ補足します。
 私たちは赤ちゃんの頃、3歳、4歳あたりまでは記憶がほとんどありません。
 ですので、その期間は「人生の長さ」としてカウントしません。
そうやって、「頭の中で感じる人生の長さ」を厳密に計算して、折り返し点をはじき出します。
 さて、折り返し点はいったい何歳でしょうか?

 なんと、「ジャネーの法則」に沿って計算すると、3歳から記憶が始まっている人の場合、折り返し点は16歳になります。4歳から記憶が始まっている人なら折り返し点は19歳。5歳から記憶が始まっている人なら折り返し点は20台の前半です。
 いずれにしても、皆さんすでに人生の折り返し点にさしかかろうとしているということです。

 ちょっと肌寒くなってきた人もいるかもしれませんが、これはあくまでも「ジャネーの法則」が全面的に正しければの話です。ほかにも学説はいくつかあって、36歳あたりが折り返し点だという説もありますから、必要以上に気にしないでください。

 いずれにしても、確実に言えるのは、歳をとるにつれ、時間の経つのは間違いなく早くなるということです。
作家の渡辺淳一さんは、時間の流れの速さを「川の流れ」に喩えてこう言いました。
「20代はちょろちょろ流れる小川、30代で川になり、40代で急に早くなった流れは、50代では激流、60代では滝のごとし」と。

 ちなみに、私自身の感覚を申し上げますと、4歳から20歳までの人生と、20歳になってから今までの人生がほぼ同じくらいの長さに感じます。だいたい20歳以降、時間が2倍速く進んでいるという感覚です。

 私は思うんですが、ジャネーという人は私たちに、こう投げかけているような気がしてなりません。
歳を重ねるごとに時間は加速していくのだから、時を無駄にしてはいけない。
 充実した1日1日を生きなければあとで後悔すると。
 皆さんも、これまで過ごしてきた16年、17年の時間をもう一度繰り返せば、30歳台に突入します。就職も決まり、結婚して子どもを育てているかもしれません。ここで忘れてはならないのは、これからの16年、17年は、これまでの16年、17年よりずっと速く進むということです。ですから、「まだまだ時間はたっぷりある」と油断せず、なるべく早いうちから、人生について考え、将来に向けた確かな準備を進めていくようにしてください。この1年の区切りにあたって、皆さんにアドバイスしておきたいと思います。頭の片隅にとどめておいてください。

 最後になりましたが、今日でこの学年が終わりを告げます。
 いい1年だった人。
 つらい1年だった人。
 振り返れば、いろいろな思いがよぎるでしょう。
 次の学年では、少しでも前向きな自分に変われたら素晴らしいなと思います。
 新しい1年が、すべての人にとって、良い1年になることを祈っています。
 では、4月の始業式でまた会いましょう。
 それまで元気で過ごしてください。